ヴォルフロッシュ

アインシュタイン塔

Einsteinturm

[photo:Einsteinturm]
名称
アインシュタイン塔
Einsteinturm
Einstein Tower
設計
Erich Mendelsohn
竣工
1921年
用途
太陽観測所
場所
Potsdam, Germany
訪問日
カメラ
Canon IXY DIGITAL 60

エーリヒ・メンデルゾーンによる太陽観測所。コンクリートを用いた有機的なフォルムを特徴とする。アインシュタインの相対性理論の検証のため、ポツダムにある天体物理学研究所AIP内に1921年に建てられた。現在も太陽観測所として使われている。当時新しい建材であったコンクリートを積極的に利用するが、技術上の問題で内部は一部レンガが使われている。メンデルゾーンの処女作であり、またドイツ表現主義の代表的建築物でもある。

所感

今まで見た中で一番美しく、完成されていて、素晴らしいと思う建築である。メンデルゾーンの作品の中でも飛び抜けている。その立ち姿は、敬愛する劇場アニメ『銀河鉄道の夜』の風景を彷彿とされる。

背骨のような窓のくぼみの付いた塔、入口への階段、ポーチ、扉(そして扉の上の照明)。"有機的" とは評されるアインシュタイン塔ではあるが、感じるのは生の質感ではなく骨のそれである。それも、生から死に転じた骨ではなく、化石のような、何万年も前から存在した時の観念の捨て去られた骨。遥か昔に生きていたことさえ忘れ去られた骨。

周囲も人がいなく、木々のざわめきと動物の鳴き声が微かに聞こえるのみ。前の芝生に置かれたベンチに座りぼーっと眺めていると、ウサギ(あの機械のような哲学的な顔立ち!)が一羽、茂みから飛び出てきて奥の森に消えていった。そのウサギを追いかけるように現れた金髪の少女はウサギを見失い、目の前に現れたアインシュタイン塔を無言で見上げる。まるで博物館で恐竜の化石を見つめているようだ。

周辺の静かな雰囲気と相まって、悠久の時を感じさせる。こうして、日々、太陽が過去に放った光を観測し続けているのだ。

今日のように白亜やガラスのモダニズム建築が氾濫することになるまだちょっと前の時代、この象牙色の建築は表現主義的アプローチを取っている。表現主義と言ってすぐに思い浮かぶのは多くの人と同じように、建築ではなく映画や絵画などの芸術である。人間の感情をさらけ出し不安を煽るようなその芸術・文学的アプローチが、道具とも言える建築に反映されると、なるほどこういうかたちになるのだ。ドイツ表現主義の代表的建築、そこに不安は感じない。

次回はぜひ冬に訪問し内部も見たい。

写真

外観

周辺

アクセス

Telegraphenberg, 14473 Potsdam, Germany

ポツダム中央駅から徒歩で20分程度。中央駅南口から直進、駅前広場を越えアルベルト-アインシュタイン通り (Albert-Einstein-Str.) へ。住宅地をぬけるとすぐに林間の道に入る。そのままひたすらAlbert-Einstein-Str.を行くと右手に研究所の門が現れる。入口でEinsteinturmの見学に来た旨を告げると、"Einsteinsurm" の案内板に沿ってひたすら行けばたどり着けると教えてもらう。研究所敷地内は広い。

内部の見学は10-4月のツアーによってのみ可能だが、外観のみならば夏期の方が緑が映えて美しい(と個人的には思う。内部ツアーはドイツ語のみ。

# 2006年10月時点

建築家

Erich Mendelsohn (1887-1953)
[エーリヒ・メンデルゾーン] ドイツ出身のユダヤ系建築家。1920年代の表現主義を代表する建築家。本人は後に表現主義的建築から直線的な新即物主義に移行する。
Wikipedia -エーリヒ・メンデルゾーン

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