ヴォルフロッシュ

三位一体教会

Kirche zur Heiligsten Dreifaltigkeit

[photo:Kirche zur Heiligsten Dreifaltigkeit]
名称
三位一体教会
Kirche zur Heiligsten Dreifaltigkeit
Church of the Holy Trinity
設計
Fritz Wotruba, Fritz G. Mayr
竣工
用途
教会
場所
Wien, Austria
訪問日
カメラ
RICOH Caplio GX100

ウィーン郊外、閑静な住宅地のはずれの丘の上に建つカトリック教会。有機的に積み上げられた152のコンクリートの塊とその隙間を埋めるガラスで構成される。

1階は礼拝堂のみで他施設は地下に配置されている。

その独特の形状はウィーン出身の彫刻家 フリッツ・ヴォトルーバ (Fritz Wotruba)の模型をもとに設計された。ヴォトルーバ存命中に教会は完成せず、その後その仕事は共作者の建築家のフリッツ・G・マイヤーに引き継がれた。

奥には星を見るためのSterngarten [星庭] という屋外施設がある。

所感

現地で買ったウィーン建築ガイドの本をパラパラしていたらこの教会の写真を見つけ、これだ!と思い、予定を変更し実際に行ってみた。ネットで調べるとどうやら行ける日は開いていないっぽいのだかそれでも行きたい。外観だけでも価値があるだろうと中はあきらめる。どうでもいいがここに行くために、ウィーン市内の銀行やエンゲル薬局をあきらめている。そのくらいこの写真は魅力的だった。

しかも、行こうとした当日は大雨。いつも思うのだが、天候と閉館日には勝てない。

バスを降り閑静な住宅地の坂道をひたすら高台方向へと上ると、その突き当たりの丘の上に教会は現れる。その先は何もない。教会へのアプローチはU型を描き、敷地内に足を踏み入れ丘を登りきって初めて正面からその建物を見ることができる。

雨の湿気を吸ったコンクリートの固まりは有機的で、建てられたというよりもまるで自己増殖でここまで育ったように見える。間にはめられたガラスは確かにそこに存在しながらも全く自己主張はしない。一般的な教会を訪れた時とは明らかに違う、なんというか、考えさせられる、改まった気分になる。

そういえば、この増殖の仕方ははタンギーに似ている。

中をのぞくとモダンなコンクリートとガラスの室内が見える。RPGに出てきそうな、かなり小振りな内観。セーブでもできそうだ。地上階は祭壇のみで、その他の施設は地下にあるようだ。インフォメーション・ボードから察するに地下には市民のレクリエーションルームのようなものもあるっぽい。

礼拝堂はコロッとした木の椅子が暖かい。晴れた日に行ったら、中は光が差し込み、窓から見える景色も緑と空だけなので、うってかわってかなり明るい雰囲気なのではないかと思う。

いろんなアングルから見たいので、教会の回りを一周しようと芝生に入ると、獣道のようなものが茂みの中に向かって伸びている。案内も何もないのだが、もしかしてビューポイントにでも連れて行ってくれるのだろうかと進んでみる。すると、その先に橋の頭のようなものが見える。なんだろう?と思い近づくと、儀式でもやりそうな謎の祭壇らしきものが現れる。さらに近づくと、それは大きな日時計だった。その先にある舞台はどうやら天体を見るためのステージらしい。ステージのまわりには夏至や春分などの時の日の出の方向を記したポールが点々と立っている。教会にこんなものが付いてると、私なんかは占星術との関係とかとかつい考えたくなってしまうのだが、まぁ普通の施設っぽい。舞台の横にはこじんまりとした芝生の広場ある。まわりはなにもないところなので、晴れた夜に来たらたしかにさぞ星が綺麗だろう。

広場の先にさらに違う方向へ向かう獣道を見つける。そこから別ルートで教会に戻れるのかと思い進んでみたのだが、その曲がりくねった道は進めど進めど茂み。人影もなく薄暗く、しかもそのときたまたまiPodで変なエレクトロ系の曲を聴いてたのもあって、だんだん不気味に思えてきて途中で引き返す。人の足跡もあるのでそれなりに使われているとは思うのだが。結局何処に繋がっていたのだろう。

天気のせいか全体としてかなり異様な印象を受けた。しかし宗教施設であることを考えるとこれは成功している気がする。モダン系教会建築の方向としてはかなり面白い。

そういえば、教会に向かうアプローチの途中に、色あせた布切れが沢山結ばれた木があったなぁ。正直な話、これも若干不気味。

雨だったのはそれはそれで雰囲気があって良かった気がする。が、次にウィーンに来る機会があったら晴れていて開いているときに見てみたい。今の印象よりおそらく実際は全然普通で軽やかなんだと思う。

開いてる日に行けば中ではポストカードなんかも買えるっぽい。

かなりオススメ。たしかに行き辛い所にあるのだが、それでも行く価値がある。

写真

外観

内観

周辺

アクセス

Rysergasse / Georgsgasse, 1230 Wien-Mauer, Austria

ウィーン郊外を走るバス60Aの 'Kaserngasse' 停留所から徒歩7分程度。ウィーン中心部から市内用の切符 (片道 €1.70) で行ける。

バス停 'Kaserngasse' までは、幾通りかの行き方があるが、Wien Mitte駅からS-BahnのS9 Liesing行き(Liesingに行かないのもあるので注意)に乗り20分強、終点 'Liesing' で下車、そこからバス60Aに乗るのが簡単。'Liesing' から最寄りの 'Kaserngasse' はバスで25分程。

バス停からは、目の前のT字路を右に曲がりそのまま 23. Mauer Lange-Gasse を上る。最初の左へ曲がる道 Georgsgasse を曲がり突き当たり。Kaserngasseのバス停に周辺詳細地図があるので参考にすると良い。

公開時間*
土 14:00-20:00 / 日・祝 9:00-16:30
休館日
月-金
入場料
無料

* 公開時間にはミサの時間も含まれるので注意。

# 2008年5月時点

建築家

Fritz Wotruba (1907-1975)
[フリッツ・ヴォトルバ] オーストリア、ウィーンの画家・彫刻家。キューブのモチーフを自分の作品の中で繰り返し使用している。建築としての代表作はウィーンの三位一体教会。
公式サイト -Fritz Wotruba
Wikipedia -Fritz Wotruba

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