ヴォルフロッシュ

シュタットハウス

Stadthaus

[photo:Stadthaus]
名称
シュタットハウス
Stadthaus
City House
設計
Richard Meier
竣工
1993年
用途
文化センター
場所
Ulm, Germany
訪問日
,
カメラ
Ricoh Caplio GX100

世界一高いゴシック建築の大聖堂 ウルム大聖堂前の広場に建てられた、リチャード・マイヤーによる文化センター。ギャラリー, カフェ, ツーリスト・インフォメーションなどを有する。"出入りのできる彫刻作品" として構想が練られ、設計されている。

このシュタットハウスの建設に際しては都市景観をめぐり住民が2つに割れた。住民投票でかろうじて建設されるも、反対意見も多い。

事実、周辺の建築物の中でこの白亜の近代建築は唯一異質である。周辺建築との対応、という名目で三角屋根の屋根並みの傾斜は周辺の建物と一応揃えられている。

所感

ウルムは比較的馴染みのある街で、ウルム大聖堂は昔から愛していたし、この建物については近現代建築に興味をもつ前から知っていたし利用をしたこともあった。場所が場所であるし、機能的にも、もちろん存在やその造形は認識していたが、さほど意識はしていなかったように思う。特筆することない当たり前のものだった。

シュタットハウスというと、どうしても景観をめぐっての住民投票を考える。このモダニズム建築はウルムの景観を乱すものなのだろうか?

率直に言うと、この建築は "あり" だと思う。当時から景観を乱すものだとは考えていなかったし、現在の目で見ても、ゴテゴテの重鎮な天を目指すゴシック建築とスベスベの押しつぶされたように背の低い白亜の近代建築の対比はなかなかだ。

ただ、次に、このような建築がウルムの街の(そしてウルム以外のドイツの美しい旧市街の)至る所に散在していたらどうだろうかと考える。ダメだ。これは対比があるから映えるのだと思う。1対多でなくてはならない。2つ目、3つ目のシュタットハウスはいらない(そういえばウルムの旧市街にガラス張りのピラミッド型の図書館があったな)

この建物と対峙するとモダニズム建築の意義について考えさせられる。一部の人がキャーキャー言っている近代建築も、生活や景観やその土地の人を考えると邪魔な物になることが多々ある。"価値が分からない云々" ではなく、おそらく本当に邪魔で醜悪なものなのだ。もちろん丹念に計算され周囲と調和したものも多くある。このシュタットハウスなんかは、私は好きだ。だが、しかし、そうではなく。フランク.O.ゲーリーのDZ Bankの様に外側は無難で中で派手にやろう、というのも違う。ニュルンベルクの新美術館のように一面のファサードを周辺と合わせる、というのも違う。都市におけるこういった建築は "特権階級的に" その都市にその視界ににひとつだけそびえ立つときにのみ輝くのだ。ビルバオのグッゲンハイムを思い出せ。

ウルム市民が守ろうとする中世ドイツの、中世ドイツスタイルの景観(ウルムの旧市街は第二次世界大戦で80%が破壊され、現在見渡せるその景観はその後再建されたものだ)にいかほどの価値があるのかも正直一考の余地がある。こういうとき、都市景観に何の配慮もこだわりも感じられない東京は、目立ちたがりの現代建築家たちにとってなんてパラダイスなんだろうと思う。

ところで、少々話がずれるが、このシュタットハウスの親とも言えるウルム大聖堂は、一番好きなゴシック建築だ。ルックスももちろんだが、"世界一高い" というのがいい。ひたすら天を目指したゴシックらしいし、神をも恐れぬというか、その思い上がりが非常にバベル的だ。

写真

外観

周辺

アクセス

Münsterplatz 38, 89073 Ulm, Germany

Ulm中央駅から目抜き通りであるBahnhof通り-Hirsch通りをひたすら行くと、大聖堂と共に目の前に現れる。もちろん中も出入り自由。

# 2006年10月時点

建築家

Richard Meier (1934-)
[リチャード・マイヤー] アメリカの建築家。非常にコルビジェ的な建築家であると言われている。若い頃はマルセル・ブロイヤーの下で働いている。円や直線で区切られた、パズルのような、積み木の様な幾何学的な白亜の建築が多い。
Wikipedia -リチャード・マイヤー

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