ヴォルフロッシュ

Blog

Published on

RSS

iA Writer for Mac

iA WriterIcon
iA Writer 1.0.1
App Store

Mac用プレーンテキストエディタ、iA Writer が熱い。

iA Writerは今年の5月末にリリースされたばかりのMac用のテキストエディタである。プレーンテキストエディタ、と言ってもコーディング用ではなく作文に特化している。ドイツ人のディベロッパにより開発されており、ストイックなほどミニマルな、しかし非常に考えられたインターフェイスを特徴とする。もともとはiPad用アプリケーションとして作成された同名ソフト (iTunes Store) のMac版となる。

文章を書くことに集中するための多彩なアイディアが盛り込まれており、長文の下書き、イメージ整理のメモ書き、議事録や授業のノートテイクでその威力を発揮すると思われる。そのイメージはあとで公式サイトのプロモーション動画を見てもらうのが手っ取り早いと思う。

とにかくひさびさのおすすめアプリケーションだ。有料ソフトで、現在AppStoreで2,100→1,600円で販売されているが、十分その価値はあると思う。


唯一にして最大の短所 -日本語

先に書いておく。現時点 (v1.0.1) では、日本語は「iA Writerでサポートされない言語」にリストアップされている(参照: FAQ Which languages are NOT supported in Version 1.0 ?)。公式には日本語対応されていないということになる。なので日本語しか使わないのならばこのiA Writerはオススメするべきエディタではないかもしれない。しかし、それでもこの記事を書いているのは、「それを持ってしてもあまりある魅力」と「でも意外と日本語も使える」の2点を伝えるためである。もちろんアルファベット語圏の言語を書く需要のある人にはより推薦したい。

日本語については後述する。

iA Writerの魅力

iA Writerは作文に特化したエディタだと先ほど書いた。具体的には? 全てをラインナップするのは公式サイトにゆずるが、特に気に入ったところを挙げたい。まずメインウィンドウを見て欲しい。

シンプルなメイン・ウィンドウ
メインウィンドウ

必要最低限かつ十分な機能

このエディタはメインウィンドウ1枚がインターフェイスの全てである。文字サイズ・フォントすらも弄ることができず、というよりそもそもこのエディタは "環境設定" すら持たない。まぁ、この辺はバージョンを重ねるにつれいずれ設定可能になるのではないかと踏んでいるのだが、少なくても現時点ではそうであり、ディベロッパもそれを売りにしているところから彼らの思想が伺える。

一括検索も可能
検索パネル

しかし字数/ワードカウントや検索・置換などの文章を書くときの基本機能はもちろん押さえている。とにかく余計な機能は積んでいないので、おかげでとても軽量で、ストレスなく書ける。

ファイルフォーマットもスタイリングを持たない単なるプレーンテキストである。ファイルは.txtで保存されるので、もし今後iA Writerを離れたとしても、過去の資産を問題なく他のエディタで開くことができる。

文章を書くための美しいUI

さすがUIは一級品である。これはとても大切なことだ。iOS生まれらしく少々Mac用ソフトウェアっぽくないところもあるのだが、それはiA Writerの魅力を語る上で重要な部分であることが多いので目をつぶろう。

まずフォントが美しい。不勉強なものでどのフォントを使っているのかわからないのだが、しかし美しいことには変わらない。また、背景が真っ白ではなくやわらかいライトグレーに、そして文字も同様に少し明るい黒である。コントラストが押さえられ目にやさしい。カーソルは青くて大きく、よく目立つ。アプリケーションアイコンもこのカーソルがモチーフになっており、エディタのアクセントカラーとしても美しいしチャーミングだ。これだけのものを最初から提供してくれるからこそそれらの設定をする必要がないとも言える。

そして、とにかくミニマルなこのエディタは、フルスクリーン・モードを備えるのはもちろん、通常の入力モードでも入力を始めるとウィンドウの上下のバーが消え、ウィンドウは完璧に一枚のただのパネルになる。いらないモノは徹底的に排除されている。

もちろんそのウィンドウ下部のパネルバーや検索パネルも手を抜いていない。

フォーカス・モード

そしてこのエディタで私が一番買っている機能が、これから書くfocus modeである。フォーカス・モードはiA Writerのユニークなところの1つである。このフォーカスがonになっている間は、ユーザが今書いている文だけが(正確には、カーソルが置かれている文だけが)強調表示され、それ以外の文はグレーに沈んで表示される。下図を見てもらうのが早いと思う。文の範囲はピリオドと改行で自動的に認識される。

フォーカス・モードでは現在書いている文に表示がフォカースされる.
フォーカス・モード

本当に文章を書く時のことをわかっているな、と思わせるすばらしく気の効いた機能だが、実はこれ、外国語を書くときにめちゃめちゃ便利なのである。やはり母国語でない言語を書くときというのは文法正しく書くのになかなか気を使うもので、1文1文がどのような文法構造になっているのか気にしながら書く。そうなるとどこからどこまでが1文なのかがとても大事だったりして、それを自動的にハイライトしてくれると本当に書きやすい。もちろんOS由来のスペルチェックも効く。

もちろん、これは母国語で文章を書くときにも助かる機能である。だが、iA Writerが現時点で欧文(と露文)対応していることもあり、とくに欧文を書くことのある人にうってつけの機能だと思う。

Markdown

また、スタイリング情報を持たないプレーンテキストに特化したエディタではあるが、そのかわり、嬉しいことにMarkdownに対応している。意外とMarkdown対応のシンプルなエディタというのはないものなので、これもありがたい。

いちおうここで解説しておくと、Markdownとはコンピュータでの文章構造の記述法の1つで 文頭の#を付ける(見出し) や 語句を*でくくる(強調) 、など、とても簡単な記述で文章構造の意味付けができる。(詳しくはWikipedia)

iA WriterではそのMarkdown記述法を認識し、それぞれにあったスタイリングをしてくれる。(ただしリンクや画像挿入などには対応していない。

例えば、ハイフン(-)を行頭に置けばリストになる。
Markdownでの記述

Markdownはプレーンテキストで記述できるという利点もあるが、キーボードから手を離さずに簡単に素早く見出しやリストを作れるので、とくに議事録や講義のノート・テイクなど入力にスピードが要求される場所で活躍できるのではないかと思う。

日本語対応状況

さて、このようになかなか魅力的なエディタではあるのだが、日本語である。先ほど "意外と日本語も使える" と書いたが、実際にはいかほどなのか。実際に検証してみた。

入力

ひとまず、対応外とは書かれているが、日本語の入力は可能である。

日本語を入力する。入力自体は問題ないが、入力時に入力行が上下にカタカタと揺れる。これは現在入力をしている行だけで起こる現象であり、上下の行は動かない。この揺れはさすがにちょっと気になるれべるである。また行間が、日本語文字(二バイト文字?)だけのときとAlphabetを含む時で変わってしまうのが気になる。この文だと四行目、アルファベットが入っている時だけ行間が狭くなるのがわかるだろう。
iA Writerでの日本語入力

ただし、画像を見ただけではわからないのだが、入力時に入力している行がかなりの頻度でガタガタと揺れるのだ。これは少々気にかかる。

もう1点気にかかるのは行間処理である。その行に1バイト文字が含まれると行間が狭くなる(もしくは日本語のみでは行間が広くなる)。これもちょっと見苦しい。

また、変換を確定するまでと確定した後の文字サイズが若干異なる。確定するまでは大きめなのだ。日本語入力を考慮していないためとも思われるが、この仕様自体は個人的には悪くないんじゃないかと思う。変換確定した瞬間に文章として固定される感じで嫌いじゃない。

ちなみに、日本語のときに使われるフォントは ヒラギノ角ゴ Pro W3 だと思われる。アルファベット部分との相性は悪くない。

focus mode

そしてこれもまた意外に、フォーカス・モード時もちゃんと「。」を文の切れ目と解釈して1文を抽出してくれる。

普通の文章を書いている限りは、iA Writer正常に日本語の句点を文の終わりと認識し、正しくフォーカスする
基本的には正しく文の範囲を認識する

ただし、文章中に記号として句点「。」が出てきた時は、実際にはその後も文章が続いていたとしてもそこまでしかフォーカスされない。「モーニング娘。」などは最たる例だがこれは仕方ないので置いておいて、この文章のようにカッコでくくった「。」も同様である。欧文ではこれらは正しく処理される。

Wenn man auf Deusch den Aufsatz schreibt und einen Punkt (.) aber nicht als den Satzpunkt darin eingibt, erkennt der Editor das Satzende korrekt.
欧文での文中のピリオド
ところが、日本語での入力となると、「。」で文章が切れてしまう。
和文での文中の句点

Markdown

マークダウンも基本的には問題なく扱ってくれる。#を付けるとインデントされて見出しに、ハイフンや数字はリストに、*で強調。ただし、しかるべき時も文字がボールドされない。弱強調(emphasis)のアンダーラインは引かれるが、強強調(strong)のボールドはそのままである。使う上で問題ないと言えば問題ないのだが、本当はボールドされるべきなので、少々気になるところではある。

日本語でのMarkdownも欧文と同じである。
日本語でのMarkdown

各種カウント

ウィンドウ下部に表示される各種カウントについては、文字数カウントは正常にカウントされている。ワードカウントは日本語では元々意味がないのでいいだろう。Reading Timeは一応値が出ているが、それが何を意味するのかはわかりかねる。一応文章量に比例して増えていっているようには見える。

検索と置換

これについては問題ない。日本語も日本語まじりも正常に検索・カウント・置換をこなしてくれる。

日本語入力時の問題点

改めてまとめると、iA Writerで日本語を使った時正常に作動しない主な点は、

  • 文章入力時に文字がガタガタ揺れる
  • しかるべき箇所でテキストがボールドされない
  • 行間にばらつきがある

の3点のみということになる。どうだろう? "意外と" 使えると思わないだろうか? ただ、入力時の揺れに関してはストレスの元となりそうなので、気にかかる人は導入を留まった方がいいと思う。

また、「コレだけ使える!」とは言ってもあくまで公式コメントでは日本語は対応外の言語であることは留意されたい。今は使えても今後のアップデートでなんらかの支障が出る可能性は否定できない。

総括

以上をふまえて、その日本語入力の短所を利点が上回ると思ったらぜひ試してみて欲しい。私は特に以下の機会がある人にお勧めする。

  • 外国語(アルファベット語圏)を書く
  • Macで議事録・講義などのノート・テイキング

理由は iA Writerの魅力 で述べた通りだ。またミニマルなインターフェイスが好きな人にもうってつけである。

いずれ日本語対応はするのではないかと私も期待しているので、それまで頭の隅にとどめておいて、日本語対応の知らせを耳にしたらそれからインストールする、それでもいいかもしれない。

いずれにせよ、まだバージョン1.0.1の産声を上げたばかりのソフトウェアであり、いくらミニマルとはいえ今後適宜機能は追加されていくと思われる。とはいえかなり思想先行型のアプリケーションなので配慮をしながら慎重に足していってくれることだろう。

私は、コーディングは引き続き(もちろん!)CotEditorを使い続けるが、日常の作文にはこのiA Writerを使おうと思う。

Comment

この記事へのコメント受付は終了しました。